東京都大田区に計画した多世帯のための住宅群です。
もともと一軒の家が建っていた大きな敷地を分筆して三軒の家を建てる計画です。
それぞれには親戚関係にある独立した家族が住みます。それらが一つの中庭で出会い、共にこの場所で暮らしていく、そのための計画を求められました。
中庭を介して出会う三つの家
進入路の先に門を設け、その内側に共有の中庭を設けます。ここをそれぞれの家が独立しながらお互いを気遣うことができる場所としました。この中庭に面して各々の家の玄関が向きあいます。
見え隠れする気配と風景
それぞれの家は、中庭を中心にして少しずつずらされて配置され、家々の間からは、少しずつ違った風景が見え隠れします。小棟は南西側に、中棟は北西側に、大棟は南側に配置しました。中庭には荷物の搬入やその他必要に応じて車の進入が可能となっています。木々の間からなんとなくお互いの気配を感じながら、同時に独立もしている、そんな家族のための計画です。
大棟は東側道路に面する二階建ての家です。応接室・リビング・ダイニング・キッチンなどをそれぞれに別の部屋として、フォーマルな暮らしかたも実現する家です。一階は土地の起伏にあわせたスキップフロアで構成します。二階には寝室からWICを介して入れるトイレ・洗面室・浴室を備えます。
中棟は北側に位置する二階建ての家です。一階に広々したリビング・ダイニングとぐるっと回れる家事動線を確保し、二階に寝室やWICを確保したファミリータイプの家です。
小棟は西側に位置する平屋建ての家です。寝室からトイレ・洗面室・浴室へ直接入ることができるバリアフリーを重視しながらプライバシーにも留意した老齢単身者用の家です。
大棟はスキップフロアでありながら全体をぐるっと回れるプランの形式で構成します。
三軒が共有する庭側のフォーマルな玄関とビルトインガレージからの家族用玄関のふたつを持ちます。ビルトインガレージ脇のアプローチを抜け、家族用玄関の扉を開けると、内部に続く階段が現れます。東側には横長の窓が設けられ、そこから光がこのスペースに採り入れられます。窓から街の風景をのぞむことができます。
家族用玄関から階段を上がり、靴をぬいで家にあがると階段ホールとなっています。階段ホールは、北側と南側に開いており、その南側がダイニングです。ダイニングは南の庭に面しており、明るい日差しが差し込むスペースで、一方はキッチンに、もう一方はリビングにつながります。階段ホールとダイニングの間は障子の引戸になっており、それを開閉することで、光や風、温度等をコントロールします。
階段ホールから、壁の間の小さなステップを3段上がったところが、庭に面するフォーマルな玄関ホールです。その一角が応接コーナーとなっており、そこから庭の様子や景色をのぞむことができます。応接コーナーの反対側にはオーディオを組み込んだアルコーブがあります。玄関ホールから再びステップを3段下がると、南側の庭に面したリビングです。リビングと応接コーナーとの間は腰上の障子で仕切られており、それをあけると、この二つのスペースの天井がつながります。